健康栄養は、非常に幅広い分野です。食は、人間が生きるために必要不可欠な、最も基本的な部分。人間の体や病気について学ぶ医学も、食べものを素材としてとらえた場合の農学も、心理学や社会学も健康栄養の領域となります。
そんな中、本学科は特に、"医学を基本にした栄養学"を理念に掲げて指導を行っています。たとえば今、医療の現場では盛んに「チーム医療」の必要性が叫ばれています。本学科が資格取得を目指す管理栄養士は、医師や看護師、薬剤師などとチームを組み、患者さんの栄養面つまり"食"を担う存在でなければなりません。最近では食の多様化がすすみ、私たちの暮らしはたいへん便利になったと同時に、それに伴うさまざまな弊害が出てきているのも事実。今後は、あらゆる側面から健康栄養について、学んでいく必要があるのです。本学科では、基礎科目に3名の医師を迎え、理論にも実習にもより力を入れた教育を実践しています。
また、学生が仕事に就いた際、常に向き合うのは"人"であることを踏まえ、優れた人間性を養うことも欠かせない課題として取り組んでいます。本学の理念であるホスピタリティの精神を、4年間でしっかりと身につけて欲しいですね。
さらに、私は自分の研究テーマでもある"ウエルネス"をベースに、学生への指導にあたっています。
健康と言えば、一般的にはヘルスという言葉を思い浮かべますが、実はウエルネスも健康を意味しているのです。ただ、ヘルスとウエルネスでは、健康のとらえ方がやや異なります。たとえば、重い病に冒されつつも、一つの目標に向かって一生懸命生きている患者さんがいたとします。従来の健康(ヘルス)という考え方からすれば、この方は決して健康とは言えません。けれども、目標に向かって満ち足りた生活を送っていることは、ウエルネスの考え方からすれば、充分に健康と言えます。ウエルネスとは、よりメンタルな部分で健康をとらえているのです。ウエルネスの定義は、「より幸福で充実した人生を送るために」。障害があっても、病を抱えていても、その人の気持ち次第で健康=ウエルネスな生活を営むことができる。このようなポジティブな考え方は、健康栄養の分野においても重要だと考えています。
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